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第百三十八回 調べる

 このコラムを書くときに何も知識なしでは進まない。大したことを書いてはいないのだが調べることはきっちり調べないと不安で仕方ない。話題に出てくる有職故実や神話などは調べても諸説ある。算数のように「これが正解」とはいかない。それでも調べられることは調べないとムズムズする。
 コラム以外でも私は調べる。私は研究会も板書がすきだ。研究会に来て参加者の皆さんはまず板書を写す。研究会前に写す人が多い。板書する内容は前日までに決める。書棚から関連図書を探すのは楽しい。おぼろげな記憶がはっきり形になる時、調べてよかったと思う。調べ物は本8割、それ以外2割だ。

 本というのはよくできた伝達方法だ。総合的に考えて本はコンピュータより優れていると思う。まず電気が必要ない。機械を持ち歩く必要もない。起動するまでのタイムロスもない。明るければいつでも読めるし、ハードでもソフトでもある。本は人間が作った数少ない文物の完成形だ。
 主婦の友社はいけばな関係の書籍がとても充実している。私には欠かせない書籍がズラリと並ぶ。―その美とかたち―シリーズはしばしば見る。生花・投入・盛花の3巻からなる。それぞれのテーマにあった作品が当時の一流作家により制作され写真が掲載されている。いけばな撮影の第一人者が主婦の友社に揃っていて美しいだけでなく知りたい部分がしっかり写っている。読むたびに感心する。日本の花シリーズは全6巻で花材別だ。1が杜若・花菖蒲・著莪・檜扇 2が水仙・万年青・葉蘭 3が柳・椿・桜 4が菊・秋草 5が松竹梅 6が蓮・河骨・太藺・睡蓮となる。豪華で読んでいるだけでゆったりした気分になる。

 いけばなの基本シリーズに桂古流もある。 父華慶が中心となって主婦の友から出版された。この本が出るまではなかなか言葉にならなかった部分も多いときく。祖父は祖父の考え方があったろう、父はあいまいな部分を随分明確にした。華慶が存命の時はペラペラめくる程度だったが、いなくなってからの数年間、本当に読み込んだ。文章を暗記はしていないが文字の間に華慶が言いたかった真意を探ろうとした。
 華盛の生花は先代華盛の作品集である。たちいけの天才・桂古流の中興の祖として今なおその名を轟かせる先代華盛が喜寿の時に出版した。桂古流の様々な形を最高の画質で保存してある。桂古流と主婦の友がしっかり組み合ってできた本である。展覧会で何を活けようかと思う時は必ず手にする。自分で活けた作品画像をそっと祖父の作品写真の横に置いて見比べたりする。

 桂古流伝書収録は父華慶が京都でリニューアルした。かつて歴代家元が記した文献を先代華盛が編纂した。現在は特製の箱に入れられ和綴じの2巻組となっている。桂古流の古文書としてもすばらしいデータが保存されている。また桂古流全花型にはおびただしいバリエーションが図として描かれている。 私が一生のうちに制覇できるかどうか… という数である。しかも高度な技術を擁する。伝書も自分の知識では心もとない時、頼りにしている。
 その他いけばな以外では色彩やデザイン、美術、植物、年中行事、桂離宮の歴史、陰陽五行説、インテリア、アロマテラピー、関連文学なども用意し、必要に応じて調べる。

 調べることは結局自分が一番勉強することになり得をしている。

 

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