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第百二十四回 役に立つということ

 有名人が忙しい時間をさいて資格をとる番組がある。ぼんやり眺めながら「なんでいけばなは習わないのかなあ」と思う。テレビ局が番組を放映するまでには制作会社なり広告代理店が間に入る。視聴率→広告料収入→次の仕事ももらえる…という彼らの頭はバブルからあまり変わらない。いけばなという視聴率に関係ない藝は入る隙間はない。それにしてもオリンピックが近づき、海外の観光客が増え、日本文化が見直されるタイミングで何故?という疑問は消えない。

 たとえば有名人が取得したその資格は生きていくのに役立つのか、と漠然と考える。有名でなくなった時にその資格で生活できるのかもしれない。世知辛い世の中、次の考えながら今を生きねばならないのだろう。

 その「役立つ」ということは一体何なのか。さらに言えばいけばなはどういうことに役立っているのか考える。私が生まれた50年前はいけばなの先生でそこそこ収入があった。これは間違いない。 高校の華道部も人気があったのは「お勤めしているより家で花嫁修業しながら、いけばなの先生のお手伝いしていた方がお見合いの…」という当時の親の思惑もあったのだろう。 いけばなの先生もそういうお弟子さんを大事に育てて自分の跡継ぎにしようとした。役立つという事が生活できるという事ならば、いけばなが役立つ時代もあった。
 しかし時代は激変した。いけばなの免状をはじめ資格だけではどうにもならなくなった。人気のある資格ですら取得したからと言って生活できるかどうか。嘗てのようにすぐ希望がかなう時代ではない。資格とともに営業もしないと職業として成り立たない。その理由の一つは日本の人口減少にある。少子高齢化にある。社会構造の変革が求められるということだが、人口減少に転じた社会が人口増加に向かうのは容易なことではない。資格だけで安心してしまう私たちの方に変化を求められているのだ。

 資格に話を戻す。まず役に立つとは生活できることとする。その資格によって職を得て人の生計が成り立つことを基にしよう。資格取得すれば就職活動しなくて済むものだ。医師免許、司法試験、公認会計士などがそうだ。
 その資格によって人に教えることを許されるものもある。教員免許、各種インストラクターはそうだ。また資格によって使用が許可されるもの。特殊運転免許証、危険物取扱資格などに代表される。では彼らが将来もその職業で安穏と生活していけるのか。ぼんやりした不安を抱いてしまう。
 幸いさいたま市は人口が増加している。とても勢いのある都市だ。 しかし市長とお話しした時に「全国の中でも埼玉県は高齢化がとても早い地域です。人口もまもなく減少に転じます。県内でもさいたま市は高齢化のスピードが早いので対策が急がれます」と応えていた。
人口が増加している時には、なりたい職業で生活できた。例えば青果店。ご近所のお客様を対象にしていても生活できた。しかし高齢化した地域ではお店は淘汰された。給食センターやレストランなどに卸す仕事を見つけた青果店が残っている。戸配などのサービスも大事になってきた。ただ単にその職業に就きたいだけでは通用しない。

 資格取得はすでに受験勉強から始まっている。理系で医学部だけが突出して高い倍率を示すのが何よりの証拠だ。他の学部が前年比を割り込んでいる中、医学部は前年比107%だ。単に理系に行けばいいのではない。今や資格だけで生活できるのは、医師免許だけだというのが受験生の見解なのである。

 ではいけばなの師範免許は役に立たないかというと、私はそうは思わない。短期間でプラスにはならないかもしれない。しかし教室を始めるには初期投資も少なくて済む。マイナスが少ないから長期的に見ればプラスになる可能性が高い。さらに言えばプラスというのは経済だけでは判断できない。生活ができるというのは金銭だけでなく、精神的身体的に健全であることも大事だ。いけばなの資格で経済活動するのは精神的に健全で、昔風にいえば「汗水流してお天道様に顔向けできる仕事」だと思う。医師に比べれば体力的にも過酷ではない。

 ただしいけばなの資格のみで生活するには今も昔も厳しい。小説家が最初は別の職業をしていて売れてきてから文筆業一本で生活するように、いけばなの資格は別の収入源を確保してあるのならばプラスアルファの資格としては非常に魅力があると思う。生徒さんが一人でもいればプラスになるからだ。花材は生徒さんが来るときだけ揃えれば良い。
 柔道の祖、嘉納治五郎先生が偉大なのは生徒の生活を心配し、柔道整復師や警察官への柔道指導などで生活の糧を見つけようとしたことだ。 その苦労が実って今の柔道界がある。 最近は柔道の先生が受け身を利用して、高齢者に転び方教室を開催し教えていると言う。いけばなも見習わなくてはならない。

 いけばなはまだまだ力がある。私たちが固く考えずに切り口を変えればいいだけだ。いけばなは現代の視点に立ち求められるスタイルになっていれば役に立つ場所はきっとある。

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