桂古流いけばな/活け花/フラワーアレンジメント/フレグランスフラワー

ホームサイトマップ
 

第六回:影の実力者


いけばなの作品づくりは構想と製作に分けられます。分けずにつくり始める人も多いけれど、たいていは分けます。

 私の構想はずいぶん前のいけばなコラムで白状しましたが、アイディアをしぼり出すのにかなり苦労します。 夜中にノートとペンを持って自分を追い込んで、基本的なフォルムを決めてしまいます。最近は携帯電話のメモに記入したりするので電車の中で思いついても逃さずにすんでいます。

 しかしここまでは誰の手もかりません。かりられないと言ったほうがいいでしょう。自分の頭の中のアイディアをふくらませてくれるのは、自分自身です。これはもう必死で思いつくしかありません。数時間で決まるときもあれば、数週間かかるときもあります。
それだけ苦労してやっと構想がきまりました。

さあここからは製作です。
すると影の実力者が登場してくれます。桂古流では「助師さん」と呼ばれている家元専属の技術集団です。

 普段は教場の師範代もつとめていただいているので、助師さんと呼ばれているのでしょうが、語源は分かりません。先生の資格を取って家元本部で何十年と経験を積んだプロが助師さんになります。

ただし上手ならば誰でも助師さんになれるわけではありません。
 展覧会場の大騒ぎの中でも、冷静に先生と「あうん」の呼吸で瞬時に意図がつうじなければ、助師さんにはなれないのです。
だから一度「この先生付きの助師さん」と決まるとなかなか次の人には交代しません。

 カメラマンのアシスタントをしていた頃、私の都合がつかない時、友達を紹介したら「新藤君もうあの子はつれて来ないでくれ」と言われたことがあります。カメラマンとあうんの呼吸が合わなかったのでしょう。
助師さんにも同じことが言えます。先生が望むようなテクニックがとくに上達するのです。

 細かい手作業が得意な助師さん、高いところにのぼって枝先を整理するのが得意な助師さん、カキツバタの葉をふくのが早い助師さん、ワイヤを通すのが上手な助師さん、たくさんの荷物を忘れ物ないように包むのが得意な助師さん、器や枝をぜったいに壊さない助師さん、先生が手を出したとき何をわたすかすぐ分かる助師さん、いけあげた後の水のそうじと次の日、次の次の日までの水差し、キリフキをきちんとこなす助師さん・・・助師さんがいてはじめていけばな作品は世におくり出せるのです。

 だからいけあげた時、思わず「これは合作だからみんなの名前をのせなきゃね」というと、助師さんは笑っています。私としては冗談でなく、かなり本気なのですが。
なによりありがたいのは、影の存在に徹してくださることです。絶対にわたしたちより前には出ていかないのです。

 今までも、そしてこれからも助師さんとともに素晴らしい作品を送り出していきたいと思います。展覧会場で私たちのそばで目立たないように立ち働いている人達がいたら、影の実力者「助師さん」だと思ってください。

バックナンバー>>
桂古流
最新情報
お稽古情報
作品集
活け花コラム
お問い合わせ
桂古流最新情報お稽古案内作品集活け花コラムお問い合わせ
桂古流家元本部・(財)新藤花道学院 〒330-9688 さいたま市浦和区高砂1-2-1 エイペックスタワー南館