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第百二十一回 ポリシーより大事なもの

 組織や社会の中で老化とはどういうことか考えてみる。ビルが新しくなっても首から認証カードを下げていても、組織の老化は細かい霧雨のように入り込んでくる。臭気が気になるように老化は直感で分かってしまう。極論を言えば若い経営者、歴史の浅い企業でも老化はする。
 私は硬直化にあると思う。昨日と同じ今日、今日と同じ明日があると慢心していると進化は途絶える。

 組織の長は臆病なくらいで丁度良い。自分は間違っているのではないか、私達より良い方法が存在するのではないかとアンテナを張り巡しいていて瞬時に情報が入るようにする。今携わっている者の魅力を限界まで引き出せていないのではないかとビクビクしている必要がある。そのプレッシャーに耐えられなくなったら辞めれば良い。マニフェストとかコンプライアンスに寄り掛かって安心してはいけない。声なき声に聴き耳を立てる。対象者がこちらに興味を持っているか、ニーズの熱量を自身の体温として感じているか。それがとてつもなく重要なのだ。
 不安の予想の逆で楽観の予想は危ない。先代がやっていたから上手くいくだろう。前回評判良かったから今回も良いだろう…は通用しない。変わりばえしないことが却って鼻につく。実力を知るには何をやっても褒めてくれる身内から遠く離れること。実力を養うには冷めた目でいけばなを眺めている人に面白いと言わせること。
 自分を常にゼロへ―普段のお稽古・研究会・展覧会…今活動しているものをすべて疑う。

 休みがまとまると旅行に出る。ホテルに泊まる。 いつも遊びに行くホテルは海辺の前だった。朝食も美味しく至れり尽くせりだった。入り口をくぐるとホワイトティ―の香りに包まれた。しかしホテルマンは真面目だが笑顔はなくランドリーは地下でうす暗かった。
 急に休みがとれて出かけることになった。いつものホテルは予約がいっぱいだった。新しく出来たホテルを予約した。中心地から少し離れた場所にあるホテルは、ドアマンのはじける笑顔で迎えられた。会う従業員すべて笑顔なのは、いささか驚いた。嬉しい驚きだった。室内も今までと違った。 シャワーと浴槽が分かれていた。キッチンとランドリーが完備されていた。おかげで朝の野菜ジュースを続けることができた。インフィニティプールの向こう側に公園が広がり、その先に海が見えた。プールサイドもすぐ座れ、飲物も簡単に注文できた。
私は新しいホテルがすっかり気に入った。もう元のホテルに戻らなくて良くなった。元のホテルの従業員は日々の業務をこなすので精一杯なのだろう。何となく疲れていた、対して新しく出来たホテルは、全員が活気に満ちていた。自分がやらなくてはとの思いを感じた。それは客にも通じ「私のホテル」となった。

 ポリシーを持つことはとても大事だと思う。しかしポリシーと相手のニーズがずれていては話にならない。暗幕を頭からかけられて手探りで言い当てるように、相手が何を求めているのか、全くとらえどころのないニーズというものをどうやっていつまでも惹きつけておくか。日々悩む以外に老化を防ぐ方法はない。
 我々はビクビクしながら新しい物をせっせと取り入れる。時には全てを一新する。ポリシーにこだわると頑なになってしまう。どこにも重心を置かずゆるやかな自然体でいること。
 何もしていないようだが、組織刷新の奥義はそんなところかもしれない。

 

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