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第百二十二回 駄作は大事

  駄作に対し駄作だという人は駄人だと思う。
 駄作になってしまったのは出品者が一番分かっている。多くの人に見られる展覧会にどうして駄作を出品することになったのか。興味をその一点に集約すると全く違う世界が見えてくる。
 私自身たくさんの駄作を発表してきた。今考えると恥ずかしくてたまらない作品もある。でもその時はそれが精一杯だったのである。だから駄作でも愛着があるし、好きだ。駄作の山を築かずに誰もが認めるいけばななど活けられるわけがない。無数の駄作のはるか彼方に一つの名作が生まれる。

 駄作にもいろいろなパターンがある。自身を振り返ると3つに分けられる。1つ目は独りよがり型、2つ目は不足型、3つ目は未来への投資型である。

 独りよがり型は駄作を産み出す可能性が最も高い制作方法である。あまりに思い入れが強いと他人はついて来られない。作者のひらめきや、喜び、興奮というものは観客に捉えにくい。「夜書いたラブレターは翌朝もう一度読み返すと良い」というのと同じで制作には冷静なまなざしが必要だ。観客は作品を見に来ている。作者の強すぎる思いなど「どうでもいい」のである。観客の作品を見る熱中度というのか好奇心の体温を正確に理解して、突き放しながら作品は作らねばならない。世阿弥の「離見の見」は現代にも当てはまる戒めの言葉だ。

 不足型は今でも駄作と深い因果関係にある。資材の不足・制作時間の不足・構想の不足などなど。お花が直前になって台風で届かないとか決めていた花器が水漏れするとか。制作時間が1時間ちょいしか取れないこともある。ゆとりを持って生活していれば防げることなのにと反省する。花材や花器は第2候補を決めておく。いざと言う時にすぐ取り替えられる。

 未来への投資型は今までの自分の持っていたテクニックや花型をかなぐり捨て、新たな新境地を切り開こうとする時に生まれる。同じ分野の人だと駄作だと思いながら「ん?」と感じ警戒する。人は臆病だから成功した世界から離れられない。そればかり続けていては飽きられてしまう。安住の道を棄て旅に出るように、作風の変化を迫られる時が来る。試行錯誤を繰り返し作品を産み出す苦しみに耐えている。こういうときの駄作は素晴らしい。駄作の中に「作者は何を目指しているのか」探ってしまう。
 背伸びしたり飛び越えたりしながら出来た作品が駄作でも、未来への投資として大いに作るべきだと思う。

 駄作がどうして駄作になったのか。理由を探り、深い愛情を持って見れば展覧会は大変興味深いものがある。



 

 

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