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第百二十三回 赤い色

 みなさんは何色が好きだろう。白か、黒か、青、緑、金、ブラウン、グレー、パープル…
人の数だけ好みの色がある。また心移りのように好きな色がコロコロ変わることもある。
 色はペンキのような無機質より記憶の中で息づいている色がいい。大瀧詠一の「思い出はモノクローム色を付けてくれ」というフレーズが心をよぎる。
 私の判断基準はバブル世代の色遣いだ。あの時代は原色だった。黒も攻めの色だった。川久保玲の衝撃は、黒を原色の頂点に押し上げた。バブル期がキラキラしていたのは思い出だけでなく着ていた服も華やかだったからだ。
 色の好みは細分化するほどその人が垣間見えて楽しい。
青の中にも深い海のインディゴもあれば、突き抜けるような空の碧もある。紬の藍、万年筆のブルーブラックが一番好きだという人もいる。
 緑ならばカキツバタの若葉が目に映えて美しいという。アンリルソーの「夢」や「蛇使いの女」の深い密林に誘うようなグリーンが魅力的だという人もあろう。

 では私は何色が好きか、と聞かれれば赤が好きだ。
 他にも捨てがたい色はたくさんある。けれど最後に残るのは赤だ。赤い色を見ていると心暖かくなる。前に進もうという気になる。失敗しても捲土重来、再チャレンジしてみようと膝を叩きたくなる。「さあ、やろうか!」と自身のONのスイッチを入れる時は赤だ。花以外の赤も気になる。パプリカの赤、フェラーリの赤、ローリングストーンズのベロの赤、アントニオ猪木のタオルの赤、広島東洋カープの赤、トムヤムクンの赤、そして浦和と言えばレッドダイヤモンズの赤である。家内にプレゼントしたパロマピカソのバッグも赤かった。
 赤い光線は波長が最も長い620ナノメートルから750ナノメートルもある。
 人に注意を起こさせる色なので、車や鉄道の広報ライト、また信号も「止まれ」が赤だ。
 赤い光の先は人の目では見ることができない、赤の外側なので赤外線という。
 色は無限にあるが人間の視覚で判断できる明度は一色につき2の8乗で256色と言われる。 色光は3原色で赤・緑・青の混合色からなるので2の(8×3)乗となる。 俗にフルカラーあるいは24ビットとよばれるもので1667万7216色である。と学生の頃、習った覚えがある。
 フルカラーに含まれるのだろうが、和の色はその中に当てはまらない色がある気がする。茜色とはスカーレット色の少し濁った色だが、ホッと落ち着く色でもある。色見本ではそのような心理変化が起きない。

 赤い花は数え切れないほど多い。赤は鳥をさそい受粉を助けてもらうためという説が有力だがよく分かっていない。牡丹、バラ、鶏頭、木瓜、椿など昔は赤が代表種だったが今はたくさんの品種が増えた。
 赤のカーネーションと言えば6世華盛の代名詞だった。お生花の足ものに赤いカーネーションが入る。そのミスマッチは、新しいお生花を作る、今という時代の風を古典華に吹き込むという祖父の強い思いが込められていた。今も我が家のお供えの花は白い菊と赤いカーネーションだ。花ではないが烏瓜も祖父の愛した花材だ。木にからんで赤い実がたくさんつく様はクリスマスツリーのイルミネーションのようだ。その姿を見て育った祖父だから自然な風情で槇柏に烏瓜を絡ませた。私は赤い花というと雑草に近いアカマンマの花を愛おしく思う。アカマンマと赤トンボと秋の夕焼け。私の中で秋は赤い。

 太陽によって一日がアケる。そのアケルという言葉が「アカ」になった。アカはまさに神の色といえるのである。日本でいえば古代神話のなかで天照大神は文字どおり天を照らす太陽神をあらわしているのもその一つの例といえる―吉岡幸雄の『日本の色辞典』にあるように赤は日本人の奥深い部分でつながっている。
 昔から祝儀に赤は欠かせない。鳥居の赤、巫女の赤、赤飯、紅白の水引。赤に内在する魔除けの力と活気が祝儀には必要だからだ。赤は五行の五色に数えられる。五行で「火」となる。 方角は南。時は夏。五神は朱雀。大内裏(平城宮)で最も大事な門が朱雀門と言える。天使南面すの言葉通り、南に向かって建つ門は平成10年に再建された。現在は奈良県で見られる。

 赤の力を最大限に利用したのは戦後日本経済だと思う。海外に行って感じることは赤が少ないということだ。私たちは何十年と会社のロゴや商品パッケージ、衣服、製品塗装などという「デザイン」に赤を用いてきた。先代華慶は日の丸が大好きだった。オリンピックで日の丸がメインポールに上がるのを感動して見ていた。
 赤で満たされると日本は幸せになる気がする。

 

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