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第百二十五回 話す人

 人と話す機会は多い方だと思う。打合せとか会議とか相談とか、職種も内容も様々だ。延々説明を求められるものもあれば、お遣いのように会えば用事が済んでしまうものもある。後者の方は気が楽だが、話し続ける人が相手だと、そのお話にお付き合いすることも仕事の延長線だったりする。無下にもできないから黙って聞いている。その中からおもわぬ知恵を頂くこともある。
 相手の動く口を見ながらお話に耳を傾ける…時もある。上の空の時も、失礼ながら目を開けたまま寝てしまっているときもある。興味のある話をされる方だと、我ながら図々しいと思うほど真面目に聞く。

 いけばな関係の皆様は人前に出る機会が多いせいかお話し上手が多い。失敗談を織り交ぜながら飽きない会話に引き込んでいく。町内だと接客業の人は話も面白いし聞き上手でもある。ついつい余計なお喋りをしてしまう。
 話の上手な人は自分の言葉を持っている。無表情の語彙が口から飛び出すと生き物のように飛び跳ねる。
 長男も次男もタイプは違うけれど話し上手だと親バカぶりを出す。

 長男は滑らかな学者タイプ。知識を入れ笑いもとる。 不特定多数の前でも度胸がいいので平然としている。人見知りもしないし誰とでもすぐ打ち解ける。羨ましい。さみしがっている人、元気のない人には自分から進んで声をかける優しさも持つ。 そして相手の話を聞く。相手が何を云いたいのか話しやすい空気感を出せる。 それらを考えずに力まずに自然とできる。

 一方次男は話すことがあまり得意ではないのかと思っていた。子供の頃から運動は好きでもお話しはしないと思いこんでいた。お稽古場でお弟子さんに聞くとしばしば次男と話す機会があったそうだ。次男自身から失敗談や学校での話を、お弟子さん達に話す姿をみて合点がいった。次男なりに大人になったと感じた。体全部を使って話す姿は長男とは違った魅力があるのだと思った。

 会話という行為は呼吸に似ている。話して聞いて話して聞いてを繰り返す。話し続けてもおかしいし、聞き続けても会話は成り立たない。

 話し続ける人に会うこともある。何か失敗をしてしまった友人に会った。その話題に触れられたくないのか、友人は一方的に話し続けた。一種異様な空気感になり別れた。
 昔は聞き上手だった先輩がいた。会社で偉くなってから自分のことばかり話すようになってしまった。多分先輩は、もっと偉い人の話をずーっと聞かされている…からそうなったのかもしれない。

 私の祖母は話し上手だった、祖母の周りにはいつもお弟子さんがいた。面白い話をする祖母の周りには面白い話が多く集まってきた。そしてますます祖母の周りには人が集まってきた。祖母はおしゃべりでなかった。人の話をじっくり聞いていた。相手の話を受けて話す祖母の話はエピソードも楽しく、みんなを惹きつけた。
 祖父先代華盛は指導が厳しく、あまりの辛さに祖母に泣きつく人もいた。すると祖母は「少し我慢してね。私から言っておくから」と慰めた。そして折を見て祖父に「お父さん、あんまり厳しくするんじゃないよ。家元家元ったって、そんなに偉かないよ」とチャキチャキの下町言葉でたしなめた。祖父は何故か言い返せず、面白くない顔をしていた。

 

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