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第百三十九回 寝る前に読む本

 一日が過ぎ寝床に入ってさて、とサイドライトをつけて本を読む。昔に比べれば遅々として進まない、1〜2ページずつ読み進めていく。若い頃の習慣が抜けず今でも老眼鏡をかけながら読んでいる。学生の時は夜中ずっと読んでいて、読み終えたら明け方になっていた事もある。
 今さらながら小説家というのはとてつもない才能の持ち主だと思う。文字だけで読者に希望を与え、心ときめかせ、笑わせ、泣かせる。
 色々と心をゆさぶられる事は楽しいのである。しかし50歳を過ぎたころから疲れるようになった。寝る前は寝るのにふさわしい物がある。寝る前なので心静かに過ごしたい。音楽ならばキャロルキングのSo far awayあるいはジュリアフォーダムのような声で夢へいざなってほしい。
 小説も淡々とした内容を読んで寝ることが増えた。殺人ミステリーなどは疲れるのであまり読まなくなった。 エッセイ・コラム・旅行記を好んで読むようになった。なるべく力の入っていない、目の前の風景を淡々と書いている物に惹かれる。実際に起こったことを脚色せず偏った見方をせず書かれた文章は、読者が想像する余地が残されている。開高健は抜きん出た存在と言える。遠藤周作のエッセイも好きだが文章から自然を感じたくなると開高の文庫に手が伸びる。開高は読者を一緒に「その場」へ連れて行ってくれて体験させてくれる。
開高のいるところが日本でも海外でも、やっていることが釣りでも従軍記者でも酒を飲んでいても、読者は傍で開高のしぐさを見ているようだ。
 開高以外だと宮尾登美子や池波正太郎のエッセイがいい。家族のしきたりを細やかに綴る宮尾、脚本家として芸能を支えた池波は深みがある。
 最近「セブンイヤーズインチベット」という紀行小説を読んでいる。チベットにつくまで幾多の困難を乗り越え(普通ではとても生きていない)何とかチベットにたどり着く。文明に汚染されていない、素朴で清らかな風習に主人公は強く心を惹かれる。実は読みかけなのでここまでしか知らない。
 
 祖父、先代華盛が上梓した華盛の生花は40年前の書籍だが今も愛され続けている。どんな一日でも寝る前にページを開くと心安らかになりますと幹部から言われた。桂古流のいけばながこれほど深く人生に根付いていることに感謝し責任を感じた。あんな重い本をどうやって寝ながら読むのだろうと無粋なことを考えてはいけない。桂古流いけばなが心の安らぎならばとても嬉しい。私のコラムも寝る前に読みたい、と言われれば。

 

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