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第百四十三回 ひだりきき

 前に書いたテーマかも知れない。最近物忘れが激しくて困る。出来の悪い頭が益々衰えていく。

  さて、今回のテーマはひだりきき。私は6歳まで左利きだった。幼い時は左手で鏡文字を書いていた。ボールを投げるのも、ハサミを切るのも左手だった。
 祖父も父も左利きだった。二人とも途中から直されて右利きになった。そのせいか二人とも左利きには鷹揚だった。母親が躍起になって鉛筆を右手で握らせて仮名文字を直した。左利きをぎっちょうという。毬杖(ぎっちょう)は木製の槌をつけた木製の杖を振る遊びだ。現在では正月行事として残る。左利きの人が毬杖を左手に持ったことから、ひだりぎっちょうとなったとの説もある。左器用が左ぎっちょになった説もある。
 左義長という言葉もあるがこれは1月15日小正月に行われるどんど焼きのことである。ひだりぎっちょとの関係は分からない。
 最近は放送コードに抵触するらしい。徐々に露出しなくなったので若い世代は耳にすることが少ないと思う。左ぎっちょと面と向かって揶揄されたのは私らの世代までだろう。

 海外でも左利きは目立ったらしい。左投げのピッチャーをサウスポーと言う。サウスは南なので直訳すると南の手首となる。諸説あるがシカゴ球場の説が興味深い。19世紀末のシカゴ球場はマウンドが東、ホームベースが西に位置していた。ピッチャーは東から西に向かって投球する。左利きだと手首は南側を向く。ライトでもレフトでもない。俯瞰したような感覚から東西南北で判断するのが大らかでいい。
 武道でも左利きは有利に働く。柔道の組手は左組の方が相手に嫌がられる。釣手と引手がぶつかる「喧嘩四つ」になるからだ。相手が組手に苦労するうちに投げる算段である。

 いけばなで左利きの利点は客位(逆勝手)を苦なく活けられる点だろう。右手左手どちらでも活けられる私は主位客位での得手不得手はない。どちらかと言えば客位のほうが好きである。祖父の作品集「華盛の生花」を見ていると祖父も客位が好きなようだ。かなりの掲載作品が客位で活けられている。
 日程の都合で忘年会の後に次の日の研究会準備をしていた。不謹慎ながら酔ったまま祖父の作品集を頼りに五行いけを活け終わり安心して寝た。研究会当日ベテランの幹部がとても苦労して活けている。私が「そんなに難しくないでしょう」と言うと「先生難しいですよ。客位の五行ですから」と応えられギョッとして見本を見た。確かに客位である。祖父の作品写真が客位だったのを気付かずに客位のまま活けてしまった。これは左利きが悪いのでなく、酒を飲んで注意散漫な私のせいである。

 

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