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第百四十五回 調和で形になる

 万年筆はいまでも好きである。修理費は意外と手軽な金額であることも書いた。今回は修理した万年筆がどこまで良くなったか試し書きをしみた。今までに3本修理した。プラチナの2本はとても満足のいく仕上がりだった。しかしフランス製の万年筆は「ン?」という感じだった。表面上はしっかり修理されている。前のような跳ねあがりにもきちんと対応してくれている。けれどそれだけなのだ。不満はないが絶賛されるものではない。直ってきた万年筆を握った時、書き始めた時の素晴らしい手ごたえ、ペンからのたおやかなレスポンスが消えた。勿体ないような、滑るようなペン先のタッチは影をひそめ、勤勉さが目立つようになった。
 ウォーターマンという万年筆なのだが、勤勉さが似合わない種類のペンだ。万年筆全体の調和が魅力的なのだ。私は一部分だけ性能が突出するのではなく全体のハーモニーが整っていれば細かい所がバラツいていてもよいと思う。

 フランスとは面白い国で調和を大事にするらしい。家内が嫁入りで持ってきたフランス車はインストルメントパネルが少し傾いていたり、窓の開閉がイマイチだったりした。けれど全体のバランスがとても良く走りやすい車だった。
 ルイヴィトンは使いやすい鞄だ。取っ手も丈夫だ。長年使っていると取っ手はさすがに傷んでくる。ウォーターマンで学んだのでヴィトン正規店に修理を依頼した。出来上がりは修理しただけでなく調和も整えてくれた。さすがだと舌を巻いた。
 小澤征爾がヨーロッパ各地を指揮して回った時、フランスの交響楽団にも行った。やはり細かいことを言えばいくらでも粗があるのだが、全体の調和が素晴らしかったそうだ。

 立ち活けはハーモニーで活けるものだ。初めて草花を活ける時は葉を残す部分しっかり取る部分を意識していく。そして活け上げた後さらに形を整えていく。9本いけは9本で形作っていくので1本ずつは不完全な姿になる。ちょうど合唱のそれぞれのパートを聞いているようなものだ。使われる役枝によって右ばかり残る枝、後ばかり残る枝などができてしまう。1本1本形を整えながら役枝を作っていくと却ってまとまらなくなる。
 枝物(木物)の立ち活けの場合、太すぎる枝は体にならない。姿かたち良くスッと伸びている枝を選ぶ。用と留は次に品のある枝にする。留を軽い枝にすると台無しになってしまう。囲はしっかりボリュームのある枝、控は細いけれど真っ直ぐな枝にする。しっかり出るところが出て引っ込むところが引っ込むとメリハリのある花型になる。

 いけばなも調和の整った花が一番だと感じる。

 

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