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第百五十一回 順番

 お寿司とか幕の内弁当とかを頂く楽しみは、食べる順番だと思う。寿司桶に並んだネタを何から食べようか考える時が好きだ。私は父、華慶と同じで好きなものは残しておく方だ。寿司だとトロ、イクラなどは後半になる。幕の内弁当の中に苦手なシイタケが入っていれば真っ先に食べるか人にお願いしてしまう。

 食事以外でも次どうしようかなと悩むことはとても楽しい。予定のない日は午前中にやること済ませて午後をどうするか考えるとウキウキする。買い物の付き合いもいい。湖畔のサイクリングも楽しそうだ。ジムも捨てがたい。などと考えるだけ考えて何もしない時間が過ぎてゆくのが一番の贅沢かも知れない。
 仕事となるとダブル、トリプルでスケジュールが重なっているのは家元の宿命だと覚悟している。日頃から行政への書類を作成しながら教室で指導したり、打合せしながら研究会の花材発注などをしている。

 お寿司と仕事を一緒に考えるのは少し乱暴だが、順番というものは大事だ。順番というのはそのストーリーを考えながら一つずつ進める。仕事においては締切が迫っているものから優先順位を決める。今日の今すぐ必要ということも起こるので、時間の制約を確認する。
 次に桂古流家元本部の仕事から進める。お稽古、展覧会の相談、研究会についてなど学院業務から始めていく。自分が抱えている仕事が終わったら出向いてくる営業の方の話うかがうことがある。私は実際に足を運んでくれた営業マンの話は聞く。百貨店育ちなので対面での交渉が好きだ。永六輔がとある番組に出演依頼を受けた。担当ディレクターから「ご出演頂けますか」と尋ねられ「どのような主旨で私に出演依頼が来たのですか」と問い返すと「あ、ご無理でしたら結構です」と言われてしまったという。永六輔という看板の大きさに本人が気づいてないだけかもしれないが、ディレクターが面と向かって真摯に説明できれば出演の可能性は上がっただろうにと思う。話が横道にそれた。

 仕事の順番で悩んだ時は私欲が絡んでいる時が多い。「どうしようもねえときはどうしようもねえものさ」と役者のセリフが耳に残っている。自分を数に入れると、にっちもさっちもいかなくなると。人が踏み出せなくなる時は案外そんなものかも知れない。人生の順番から自身を外すのは容易ではないが、時として求められることもある。組織を背負っていれば、次の代を考えれば、口にしたいことも飲み込まなくてはならない。気持ちのまま話せば仕事の順番も狂ってしまい、今まで築いたものが崩れ去る事もある。世間から見られた私の立ち位置を意識すれば、我を殺して仕事の順番を守ることも起こる。感情に任せて突っ走るのが順番として正しいのか、それとも危険なのか迷いながら踏み出すこともある。

 古典花でも盛花でも枝選びと挿す順番が大事になる。体の枝は下から一本棒が突っ立っているのではない。体の枝は緩いカーブを描く。ひらがなのくの字のような形になる。体の次に大事な用も然りで棒状でなく柔らかいS字となる。花形の中心が硬くならず柔らかい順番で挿していけば中心に柔らかい曲面が見えてくる。陰陽道の影響を受けた日本の習い事は順番を守れば玉のように中心が転がる。それでいて中心はぶれない。二重切の立ち活けなども順番通りに挿せば中心に柔らかさが宿る。立ちいけで順番をバラバラに挿すと決して立たない。決められた順序で挿すのには力学などの法則に基づいているからだ。しっかり留まり、音もなく抜ける。正しい順番には陰陽の理がある。

 桂古流も多くの華道家が先代からの知識を受け継ぎ、自分自身を磨き上げ、次代に教えをつないで今がある。桂古流の繁栄には連綿と続くその順番が守られている。

 

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