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第百五十二回  クリエイティブでない仕事

 何の仕事をしていても楽に生きていける職はない。医療関係の方とお話ししていると収入は安定していても長期休暇は取れないという。海外旅行も1週間は無理でせいぜい2〜3泊できれば十分だという。疫病が流行すれば命懸けで患者を治療する。徹夜も覚悟で患者を守る。並大抵な熱意で就ける職業ではない。公務員も何か問題が起これば帰れなくなることがあるらしい。通常業務が7時間半で残業が7時間半になる事もあるという。私が知らないだけで色々な方にお世話になっていると感謝しなくてはならない。

家元を職種と考えた時、若い人に憧れられる一つであるらしい。 誰もがなれる訳ではない点、権力や財力(そんなものと縁はございません)を自在に行使するように思われている点、華やかでクリエイティブな仕事がメインとみられる点などからだろうか。
確かにクリエイティブな部分はあるが、そればかりでは成り立たない。地味な作業あっての仕事である。今回はクリエイティブでない仕事にスポットを当ててみる。

 研究会などは開催1ヶ月前に会長と連絡をとる。前回の講評で決めた花材・花型で良いか確認する。冬が暖かいと春の花木が早く出荷してしまいタイミングが合わなくなる。花屋さんに問い合わせて入荷できると分かれば会長さんに連絡網を流してもらい出席者の人数を決める。この時に研究会の前に予習したい人の分を忘れないことだ。例えば研究会出席者が20人で予習したい人が4人、見本が1つで25瓶必要となる。
 残材の事も考える。草花と枝物では残材の量が違う。カキツバタやキクなど草花ならば小さいダンボールに余裕で収まる。ヒバや氷室杉の二重切り活けなどでは残材が多く出るのでダンボールの大箱が2つ必要となる。花留のハズも作っておく。人数分より少し多めに作る。祖父は作らなかったらしい。父は丸木の状態だった。私はYの字にしておく。水仙ではヤマト糊や半紙の短冊、燕子花ならば手拭、松ならばネイルリムーバーと脱脂綿が必要となる。
 見本の花を活ける時、出来るだけ癖の出ないようにいける。教科書通りというか展覧会の作品とは対極の、個性を殺した姿にする。自分の作品ならば使いたいと思う枝でも、全員にそのレベルの枝が行き渡るとは限らない。素直な枝で形もシンプルに仕上げる。見本は活けるだけでなく、その時の枝の印象を覚えておく。折れやすい枝か、筋が抜けているのか、曲は強くないか、脇枝は取れるかなど枝取りする上で大事な情報をまとめておく。研究会の時は見本の花をそのままにして話す時もあるし、途中まで抜いていけるポイントは話しながら再び挿すこともある。見本を眺めながら「ああ、これを持って帰りたい」などと嬉しいことを言ってくれる会員もいる。
 展覧会では自分の作品だけ出品するということはない。桂古流一門みんなで仲良く出品する。埼玉県展が20人、日本いけばな芸術展が25人、さいたま市展が35人、いけばな協会が50人、コルソでのミニ花展が55人、伊勢丹で開催する桂古流展は200人近くになる。花材や花器が重ならないよう表にして管理する。前期後期などで出品時期がずれる時は同じ花材にすることもある。花器の貸出、赤帽の受付、出品料の管理は京子が一手に引き受ける。
 埼玉県いけばな連合会とさいたま市いけばな芸術協会の事務局は桂古流が取り仕切る。埼玉会館の打合せ、取引先への連絡、ポリタンクやポータブルマイクなどの積込も展覧会には欠かせない。文化振興課への連絡など行政への打ち合わせ、事務書類の制作と提出などなど。私というより事務局の皆様のお力である。
 展覧会が終わると最後に忘れ物が出る。ご本人は気付かないのか或いは恥ずかしくて言い出せないのか。一定期間が過ぎると処分する。

 クリエイティブな仕事はほんの一部分で、 大部分は地味でクリエイティブでない仕事である。その仕事をきちんとこなすことで家元は成り立つ。

 

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