桂古流いけばな/活け花/フラワーアレンジメント/フレグランスフラワー

ホームサイトマップ
 

第十六回:人前でお花をいける


私は人前でなにかするのは得意ではありません。というとみなさん「えーっ、うそでしょう」とおっしゃいます。でも本当は一人で本を読んだり、こうやってパソコンに文章をうちこんでいる方が性に合っています。

社会人になったときデパートで接客のイロハを教育していただいたので「どうせ人前に出るならば、自分も一緒にたのしもう」と思うだけです。デパートのお客様といけばなを習っている人は、同じ色のかたが多いのです。

デパートではいつも人の目にさらされているので、恥ずかしさという感覚が麻痺していきます。人様の迷惑にならないことならやってみよう、という気持ちが行動の基準になりました。恥ずかしがらず一生懸命やると、大声でのセールの売り出しやお歳暮の得意先回りも案外楽しいものです。

そのせいか家に入ったあとも、あまりつらくなく仕事ができるようになりました。20年前、就職がきまらない私をなかば強引に百貨店に押し込んだ、亡父の先見の明はすごいなと今さらながら感じます。

けれどデモンストレーションとなるとやはり構えてしまいます。展覧会や撮影の花は準備をしっかり整えてスタッフ総出でいけることができます。一方デモンストレーションは限られたスタッフと限られた材料でいけます。

しかもみんなが注目しているので緊張の度合いが違います。デモンストレーションの最中に手がふるえることもしばしばです。お客様から「それはちがう!」なんて叫ばれたらどうしよう、とおもいながら進めます。

かといって完璧に準備して、話すセリフも一字一句まで暗記したらそれはそれでつまらないデモンストレーションになってしまいます。お客様との交流というか、ある程度のライブ感がないと会場が沸かないのです。

私は7割前後の準備をしてあとは会場まかせにします。当日まではお話の上手な人は誰でも参考にします。時の人や流行語、話題など丹念に観察します。橋下知事、田中真紀子議員からジャパネットたかたの社長、綾小路きみまろまでチェックします。

かといって中身がないとつまらないので、どう話題をつなげるかも練ります。
当日のお客様を見てギリギリに話す内容を変えることもあります。

9月下旬におこなったデモンストレーションは、120名着席のホテル宴会場で時間は1時間でした。お客様の層はいけばな関係者ばかりで、皆さん私よりキャリアのある先生ばかりです。こんな時に気取った話なんかしても盛り上がりません。どこまでの笑いなら盛り上がるか、どんな形のお花を見てみたいのかを手さぐりですすめます。

今回は古典的なお花を中心に組んだので「どうしてこんな形になったのか」という話をたのしく分かりやすく話さなくてはなりません。むずかしい専門用語はさけます。

表や説明文もつくっておきます。一枚ずつの紙にするとこちらを向いてくれないので紙しばい方式をとります。時間配分も大事です。ひとつの花のいけあげるのに10分が大体の目安です。

ここまで準備しても失敗します。その時はアタフタしません。堂々としています。できなかったんだから仕方ありません。次の花に移るという手もあるし、助手さんにふってしまうという荒わざもあります。

そして最初と最後のご挨拶はしっかりして拍手をいただきます。
やれやれ、これでやっと一段落です。

 

バックナンバー>>
桂古流
最新情報
お稽古情報
作品集
活け花コラム
お問い合わせ
 
桂古流最新情報お稽古案内作品集活け花コラムお問い合わせ
桂古流家元本部・(財)新藤花道学院 〒330-9688 さいたま市浦和区高砂1-2-1 エイペックスタワー南館