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第百六十二回: 何でも言える空気感

 桂古流には研究会がある。桂会研究会・桂会講習会・桂古流各支部の研究会・立ち活けの研究会である。立ち活けの授業前には分からないことを聞いてもらい、後にはどうすれば良いか質問タイムを設け講評する。桂古流は活発に意見が出ると思う。研究会で習いたい型や今日の資料の分からなかった点など「リクエスト」を受け付ける。話が脱線して関係ない質問になることもある。
 支部研究会で実技に向かない教室の時は講義をお願いされる時もある。立ち活け研究会の後に花留め轡の勉強会を有志で開催したいと申し出られる事もある。この手のリクエストはとても嬉しい。出席した皆さんのやる気を感じると私もできる範囲で「何でも」受け入れようと頑張る。

 最新のフラワー装飾やアクセサリーの相談は家内が引き受ける。フラワーアレンジの1級技能士でグルーデコもできるので専門的な相談は家内にしか答えられない。生徒さんから「ハーバリウムを教えてください」と要望が来た。家内が必死になって企画・準備した。ここ数年の中では大きなヒット企画となった。少しずつアイテムを変えながら需要が続いている。実は家内からハーバリウムを見せられた時、私は理解できなかった。制作が偶然すぎて作者の意図する物に仕上がらないのでは…と感じた。でも私が相談を受けたことではないので家内に任せることにした。
  桂古流は徐々に分業制に入っている。コラムは私が書き、白龍が校正している。この数年でいけばなデモンストレーションを10以上こなした。研究会の講義もしている。
 白龍と玉兎で高校華道部の指導に行っている。私が教え始めたのが24歳なので1世代ずれたことになる。たまに私が高校へ行くと「なーんだ」という雰囲気になる。先に「今日はおじさんでごめんなさいね」と言いながら指導する。

 私は「まだ早い」ではなく「もうできる」だと考える。習いに来ている人々のニーズがどこにあるのかヒントが見えたらすぐ動き出す。身軽に素早く図々しくが信条なのでどこへでも出かける。何も言えない空気感を作る組織は非常に危険だ。トップがイエスマンしか傍に置かない組織が如何に脆いか。巨大グループがあっけなく滅びるのを何度も見てきた。トップはこれで良いのかという不安を抱えている位で丁度良い。周りから意見が湧き上がる雰囲気にするには、上に威厳などない方が出てくる。
 私という存在はハタから見ると自身と違うらしい。先日幹部から「うちの生徒さん、師範の試験の時、家元先生がとても怖かったと言っていました」と言われた。続けて「でも研究会に行ったら前の印象と違ってとても可愛かったそうで思わず写真撮っちゃったそうです」ときた。私のことが怖いとどのあたりが怖かったのだろう。さらに私のどこが可愛かったのだろう。私を可愛いと言ってくれた女性は祖母以来2人目だ。いくらおじさんとは言え私を可愛いといった生徒さんは貴重だ。「どこが可愛いか詳しく聞いといて」とその幹部に伝えた。

 日本画家の浅野信康さんは高校時代の親友である。彼は東京芸大に進学し日本画を極め院展に入選し法務省や外務省に買い上げられ、個展にでも人気のある作家である。今や押しも押されぬ大家となった。ある時彼が個展を、私が流展を同じイセタンの7階、アートホールと美術画廊で開催した。通路を挟んで準備をしていて偶然2人同時にそれぞれの会場から出てきた。私が思わず「浅野ちゃん!」と言うと「ああ新藤ちゃん!」と応えてくれた。浅野さん側の画商さんは私を怪訝な顔で見ているし、桂古流の皆様も不思議そうにしている。時を超え何でも言い合えた頃に戻った。冗談を交わした昔に戻った。
何でも言える空気感は個人でも組織でも風通しを良くする。

 

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