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第十八回:あなたの中の野性


「この枝はどうしてこんなにねじれているのですか?」お弟子様から受ける質問で最も多いひとつです。「どうしてでしょうねえ」といいながら、ついつい人間て面白いと感じます。

植物にしてみれば切られるために生えているのではなく、繁殖するために枝葉を伸ばしています。光合成を活発にし、種子を鳥に食べられないように進化します。ねじれるのもトゲだらけなのも自分たちの繁殖には欠かせないからなのでしょう。

でも人はいけばなの「花材」となった瞬間から「植物」とは考えなくなる場合もあります。花材は折り紙や画用紙のように無機質であってしかるべき、という想いがあるのかもしれません。そこで「どうしてねじれているのですか?」という質問につながります。

お弟子様の質問には冷静に対応できる私も、自分のことになるとやはり「どうしてこの枝はこんなにねじれているんだ」と思います。そして無我夢中で活けています。無意識のうちに戦っているようなもので、こういう時は「伝統芸能をたしなむ」とか「季節感を愛でる」なんて余裕はなくなってしまいます。ただ単純に植物と相対峙していることにのみ没頭します。理性が脇に押しやられ野性が支配します。何ともいえない充実感、幸福感が体を満たしてゆきます。

こうしてできあがったものに正解はありません。点数もつきません。でも何か大きな事業を終えたような達成感に包まれるのです。私が今まで「このっ、このっ」と戦っていた植物に深い感謝と敬虔の意をもつのもこの瞬間です。大きな魚を釣り上げたときや獲物を仕留めたとき人は同じ気持ちになると思います。自分の理論だけでない野性の部分をかいま見た喜びはなににもまして輝くのです。

釣竿のしなりと遠くでジャンプするカジキマグロ。サバンナでジープの前を疾走する水牛の群れ。それらが太い枝を折り曲げている私の延長線上にいると感じるます。

いけばなを楽しむのは色々な方法がありますが、声も立てずに黙々と活けるのも楽しいものです。今日も植物と向かい合った時、あなたの中の野性が解き放たれていきます。

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