桂古流いけばな/活け花/フラワーアレンジメント/フレグランスフラワー

ホームサイトマップ
 

第百九十一回: 継続できるビジネスモデル

 起業して10年のうちに9割以上が廃業するという都市伝説がある。モンシロチョウが成虫に無事育つのは1%と言われている。どこまで信憑性があるか分からないが、昆虫の世界も人間の経済活動も現実は厳しいのだ。エイペックスタワーの事業所を見ていると皆様堅実な経営をされていて数十年着実に成長されている。素晴らしい事と尊敬する。ビジネス=生業とした時、毎月生活できるだけの事業収入を稼ぎ出さなくてはならない。製造・流通・サービスなど様々な業種は需要があるから事業として成立する。その成立に必要な条件として天地人は欠かせない。天の時と地の利と人の和がかみ合った時初めて事業として成り立つ。

 商機がどこなのか判断するのは天才でも難しい。かつて西武百貨店の堤清二が「これからはお客様がデパートに来なくてもお買い物ができるようにしよう」と考えた。当初最先端とされたキャプテンシステムでの通信販売を試されたが、時代が追い付いておらず成功しなかった。アマゾンが創業する20年も前の話だ。時期があっていたならば西武百貨店はグローバル企業に発展していたかも知れない。

  私はいけばなという伝統芸能の世界に身を置く。ビジネスと関係ないようだが、「伝統芸能はなぜ滅びないか」という事をふと思うことがある。ビジネスとして考えた時、伝統芸能は素晴らしい完成形を備えている。伝統と言っているので後世に芸を伝えなくてはならない。即ち過去から受け継いだものを未来の人々も魅力を感じるよう工夫して残していく。

 人間はどんなに優秀でも老いる。秦の始皇帝の例を出すまでもなく、不老不死ではいられない。トップが変わらないことで組織も老いる。引継ぎのタイミングを逸した組織、イエスマンしか周りにいない組織は新陳代謝しない。側近に煽てられて実情に目を向けず「俺が大きくしたのだから俺のだ」と組織を私物化してしまう。戦後の復興景気以降、一生懸命に働いて成功した、というビジネスモデルが日本では尊重されてきた。バブル崩壊以降そのモデルは通用しなくなった。あれから何十年経っていても、通用しないビジネスモデルにしがみ付いている組織のなんと多い事か。組織のトップが新しい風を吹き込む事で時代に合った発展につなげたいという謙虚さがないのか。ディズニー映画「ダンボ」の印象的なワンシーンがある。サーカス小屋で火のついたビルからダンボを突き落とす出し物が企画される。団員がダンボを突き落とすと大きな耳で飛び、観客は大喜びする。満員の観客に興奮した団員は「今度は倍の高さから落とそう。倍の人数が集まる」と言った。子供心に「そんな簡単に人が増える訳はない」と思った。すごいと思うけれど一度見れば十分という人が大半だ。大人になり今思い返すと、似たような勘違いで失敗したビジネスモデルをよく見かける。平成以降の人の方が用心深く、この手の失敗はしないようだ。過去の事例を調査するのかもしれない。

  いけばなという伝統芸能は古い事をそのまま伝えていく事ではない。如何に今の時代、この場所、生活している人が求める形に仕立てるか、を常に考える事だ。私が一門の皆様に「今、この場にいる人々が見て喜ぶいけばなを活けましょう」とお願いする。明治・大正・昭和・平成とそれぞれの時代の人々が、大切にしてきた事の「何」が令和でも通用するのか考える。場所ならば地域の人々の特性をどこまで把握できているか流行の範囲を注意深く探る。日本の流行、世界の流行、どの範囲の変動かを意識する。そして人。大事なのは世間の人々の求めるものを提供できるかだと思う。恐ろしいのは評判や忠告を顧みず内側へ内側へと籠ってしまう発想だ。

  ビジネスモデルとして成功するにはもちろん財力や運も必要になる。

  私は自身が必死で働くのと同じくらい、どのタイミングで引き継ぐかも、継続するビジネスモデルかどうかの分かれ道だと思う。

 

バックナンバー>>
桂古流
最新情報
お稽古情報
作品集
活け花コラム
お問い合わせ
 
桂古流最新情報お稽古案内作品集活け花コラムお問い合わせ
桂古流家元本部・(財)新藤花道学院 〒330-9688 さいたま市浦和区高砂1-2-1 エイペックスタワー南館