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第二百六回:  楽しまなければ伝わらないもの

 日本人は真面目だと思う。海外の人の間で「日本人は真面目だし親切だから好かれている」と評されるのは頷ける。日本人が長い時間をかけて形にした「真面目こそ善」という太い共通認識に基づいている。個人が抗っても容易には変わらないだろう。苦しんだ分だけ栄光に近付くとか巨人の星の「思い込んだら」とか根強く残っている。運動部の練習中に笑顔でいると「ヘラヘラ」という形容詞が付く。笑っている=不真面目という感覚だ。

 私の高校時代はスパルタの一歩手前くらい厳しい校風だった。「暗記科目はノートを真っ黒にしろ。真っ黒の先にピンクの未来がある」と日本史のF先生から言われた。運動部、特に武道に於いて感激して泣くまでは許されても喜びは表現しなかった。勝っても負けても感情を表さないのが良しとされていた。理由は負けた相手への礼儀だとも、品格だとも言われる。勝って涙、負けて涙だった。

 そのど根性精神の中にスポーツが入って来た。柔道はjudoとなった。勝てば飛び跳ねて喜び、納得いかなければ堂々と審判に抗議する。そこにガバナンスが働き、次の大会では是正される。相撲・柔道はビデオ判定が採用され、行司差し違えの判定となることもある。「不服を我慢する美徳」は絶対権力者を作ってしまう危惧もはらんでいる。公正な判断・運営がなされているか相互で監視・統制するには師弟関係があまり厳格でない方が良いのだろう。

 競技者は楽しむようになった。楽しんで競技の素晴らしさを広めることが求められる。観客は「息をひそめて真剣に」から「競技者と共に楽しむ」ようになった。

 マラソンの増田明美は苦しんで耐えればメダルに届くと努力した。貧血、骨折、心無い罵声もあった。途中棄権の大会もあった。オレゴン大学に拠点を移した増田はオリベイラが主宰するクラブで練習する。必死で努力する増田にオリベイラが「アケミ、良い結果は生きていてハッピーと思える時に生まれる」とアドバイスした。増田は初めて走る楽しみを知る。日本でなくオレゴンで。楽しむから夢中になれる。夢中だと辛い気持ちは消し飛ぶ。そこでいい結果が生まれれば、さらに楽しくなる。

 結婚も子育ても楽しんだ。多分その当時に戻れたならば「楽しいだけじゃなくて、大変な事だらけだ」と自身に言い返されそうである。でも充実していた。一生にそうそうできる事ではない。笑顔はもちろん泣かれても悪態つかれても可愛い。私はどんな事があっても楽しもうと決めた。親の顔は子供に影響を与えると思う。笑顔の連鎖は楽しく幸せを引き寄せる。

 いけばなも流派の中心である家元が楽しまなければ、周りは楽しい訳がない。真剣、集中、真面目のさらに中心に「いけばなを楽しむ」がある。

 

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