桂古流いけばな/活け花/フラワーアレンジメント/フレグランスフラワー

ホームサイトマップ
 
第二百八回:  禁止と言わない工夫

 日本は規律正しい国だと思う。裏返せば禁止の多い国だ。街中で禁止の文字を目にせずに、一日過ごせるだろうか。

 私が子供の頃の教育は「いけません」「ダメでしょ」「やめなさい」と禁止のオンパレードだっ た。生身の子供が頭ごなしに禁止を受け入れられる訳がない。私もそうした一人で、禁止に反発して人生を送ってきた。先生 に「どうしてハイって静かに言う事聞かないのッ」と叱られるたび『マネキンじゃあるまいし静かに座っていられない』と 思った。理由も聞かされず納得もせず禁止だけで従うわけがない。

 ある時、家内が高齢者の親族の代理で書類を取りに行った。委任状と自身と親族の証明書を出して担当者に代理できた旨を 伝えると1つ目の課、次の課はすんなり手続きが済んだ。最後の課に行き同じように提出すると「委任状ですが…」と担当者 が話し始め「お名前や記載だけでなく委任理由も記載がないと躰を為していません」と断られた。家内は「自分の名前を書く のがやっとでとても理由を書くことはできません。これで他の課は受理して頂けたのですが」というと、担当者は「この委任 状は…」と機械のように繰り返し始めた。家内は「では書類は受理いただけないのでしょうか。私はどのようにすれば良いで すか」と食い下がると、上司らしき方に担当が代わった。彼は「申し訳ございません。規則で私が代筆して良いとお勧めした りする事は出来ないのです。また委任状に委任理由がないと受理できないのも本当なのです」と謝罪された。そしてニコッと 笑い「委任理由のある委任状でしたら受理いたしますので」と話し、担当者はその場を離れた。家内はハッと気づき担当者が 離席しているうちに理由を記載し提出すると「はい、こちらで受理します」と受け取ってくれた。家内はとても感謝したとい う。

 私は近所のコンビニで野菜炒めの素を買うのが好きだ。細かく6種類くらいの野菜が入っていて炒めれば食べられるもの だ。子供に食べさせようと思い、翌朝袋を見ると一部が裂けていた。自身が食べるならばともかく、子供に食べさせるのに異 物が入っていても困るし、おかずは外にない。悩んだ末に朝5時半にコンビニに持って行った。レシートもない。断られたら 買い直せば良いと思い、店員に話すと「あ、失礼しました。すぐお取替えしますね」と新しい商品を持って来てくれて丁寧に 確認してから交換してくれた。私も落ち度があるのに、帰りに本当に失礼しましたとお辞儀してくれた。まるで百貨店員のよ うな接客に恐縮してしまった。

 何でも許せばいいのではない。何故機械でなく人が行っているのか。その部分をクローズアップして欲しい。正解でないも のはすぐに見捨ててしまうのでなく、どうすれば問題なく運用できるのか考えるのが人間だと思う。

 自身を振り返って、今一歩踏み込む熱意、細やかな対応をどこまで出来るか反省している。桂古流の繁栄は多くの先生方が 我が身を振り返らずに生徒様の事を、そして花材の事を大事にしてきたからと思う。生徒様は何を習いたくて通ってきてくれ ているのか、古典花か現代花かアレンジかその他なのか。私達は柔軟に対応しなくてはならない。桂古流ならば許される。桂 古流ならば教えてもらえるという期待に工夫して応えるのが家元の仕事だろう。生徒様からの思いもよらないお稽古の要望を 頂いた時「できません」と断るのは簡単だ。そこを我慢して自分も一緒になって体験できるかどうかの差だと思う。京子が新 しい商品や流行のアイテムに強いのもありがたい。桂古流のハーバリウムは生徒様のリクエストに応える形で始まった。私に は知識もセンスもないのでハーバリウムもよく分からない。そういう時に禁止はしないように心掛けた。できるならばやって みれば?というスタンスを取った。京子はいけばならしく、せめて桂古流アレンジ部らしくなるように工夫した。そうするこ とで、桂古流のハーバリウムは大いに流行した。

バックナンバー>>
桂古流
最新情報
お稽古情報
作品集
活け花コラム
お問い合わせ
 
桂古流最新情報お稽 古案内作品集活け花コラムお問い合わせ
桂古流家元本部・(財)新藤花道学院 〒330-9688 さいたま市浦和区高砂1-2-1 エイペックスタワー南館