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第三十七回: 足元

 いけばなは形がどうであれとまっていてくれなくては困る。崩れてしまうのはよろしくない。かといってコンクリートのごとくガチガチに固定していては面白みにかける。野鳥がこずえにつかまるように、友人どうしが握手するように、簡単にはずれるけれど自然にとまっていること。これがいけばなのだいご味の一つだと思う。


 余談だけれど、食用油のキャップの技術について。あの開発も素晴らしいものがある。簡単にパチッと開いて油が注げ、もれずにふたをすることができる。四角いアルミのサラダ油を覚えている世代にすれば革命的な進歩だろう。いけばなの花留を生みだした日本人ならではの発想だ。このキャップの技術、関東では川口の折茂製作所をもって第一とする。みなさまがつかっているさまざまなプラスチック製品のキャップには、折茂製作所の技術が含まれているものが多い。 さて、いけばなのお話に戻る。


 まずは立華。安土桃山より続くこの花型は「コミワラ」という花留を用いる。わらを煮てやわらかくしたものを切り揃え、ひもで縛ったものを器に入れる。枝はこのコミワラに挿す。わらは植物独特のしなやかさとずぶとさがあり、枝をしっかり留めてくれる。最近はプラスチック製も出ているらしい。折茂製作所は関係ない、念のため。


 つづいて立ちいけ。「生花」ともいわれるこの花型は、ハズ・コミ・クバリと呼ばれる又木で留める。流儀によって角度は違うがY字の中に枝を差し込んで留めることに変わりはない。素材はいろいろあるが、ハチスの枝はねばりがありよく使われている。ハチスは又木も使うが、1本棒も割って両開きにして花留とする。他の種類の枝でも最初からYの字の枝は何でも使う。サクラやウメ、サンシュユなどはいい又木がとれる。花材の残り物に目を光らせると、結構とれる素材が多い。外出していても梅林をつぶして宅地にしているときなど菓子箱1つくらいとれる時もある。うちの花屋はハズを見つけるのが上手だ。よく心がけてY字の枝を届けてくれる。


 投入れには多様な花留が用いられる。なにも息を止めてさしこまなくても簡単にとめる方法はいくらでもある。私はよく竹串をお弟子さんにすすめる。茶花の先生が得意にしていたテクニックだ。それ以外にも輪ゴムや針金などで横棒を固定する。つぼの中で足元が十字になれば相当大きな枝でも動かなくなる。


 盛花は剣山と切っても切れない関係だが七宝の存在を忘れてはいけない。大きい枝をとめるには七宝のほうが安定していたりする。また七宝は下草で隠すようなことはしない。粋な姿をしているからだろうか。カキツバタをはじめ水草の盛花では、足元をすっきり見せる。七宝がまる見えでもかまわない。お次の話題は剣山である。いけばなの足元と言えば剣山であるが、最近は需要が減っているという。かつて花屋にも剣山は数多くあり、結婚式のテーブル花などに使っていた。今は全く見たこともない花屋さんもいることだろう。エコロジーの中でもリユース(何度も使う事)は大事な考え方だ。アレンジ向きの四方に挿せる剣山とか作れば、まだまだ可能性のある道具である。


 オアシスはアレンジをはじめ多くの花型に使われている。現在一番普及している花留だろう。他の花留のいけばなが手に技を覚えさせる習い事だとしたら、オアシスのいけばなは出来たものを持ち帰る習い事だ。実際できあがったアレンジを商品として販売する時に型崩れがない、保水力がよいなど優れた能力を発揮する。乾いている分には軽いし管理も楽だ。その一方で石油製品であり何度も使い回すには不向きな点は、今後改善がもとめられる。オアシスは急いで水に沈めようとしないほうがいい。無理に手で沈めようと水に押し込むと外側だけがぬれ、中に水がしみこまなくなってしまう。バケツの上にうかべ、勝手にしずむのを待つのがいい。オアシスに草花を挿すときは深く挿さずに1〜2センチを目安とする。そうすればオアシスの中で枝同士がぶつからない。


 いけばなはその歴史とともに足元も変化してきた。極論すれば足元をどう留めるかで上の形も変化してきたといっても過言ではない。私たちはつい上の形だけに目がいってしまうが、どのように留めているか(簡単な方法か、今までにない方法か、しっかりまっているかなど)はとても大事なことだ。新しいけばなへの道はここが出発点かもしれない。


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