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第四十二回: 火事といけばな

 私はさいたま市消防団高砂分団の団員である。村山富市が総理大臣のときに入団したから15年くらい前だろう。阪神大震災直後の首都圏防災訓練が浦和で実施された。政府も防災意識を高めている最中だったから、非常にものものしい雰囲気だった。にも関わらず高砂1丁目から団員登録がなく(高砂1丁目は以前お話ししたように高ピーなので誘われなかったらしい)町会長に「若手を入れよ」とお達しがあったそうだ。この地域はガソリンスタンドや灯油をあつかう米屋がないので火に関係のない職業の3人がえらばれた。美容師の川村さんカバン屋の羽部さんと私だ。町会長に「私たち火に関係ないですけど」と反論すると「もうすぐ新しい消防車買ってやるから」と子供がミニカーで誤魔化されるようにして入れられてしまった。初めは釈然としなかったが、川村さん羽部さんは機械好きだったこともあり熱心に参加され、今年とうとう役員になった。


 こんな立場なので火事の恐怖は目の当たりにすることが多い。2時間前に防火パトロールで回った場所から出火した。またたく間に火は燃え広がり、木造家屋が全焼した。その家に住む女性が亡くなった。後日遺された息子が瓦礫と化した我が家から思い出の品を探していた。このような光景をみると「火事と喧嘩は江戸の華」なんて無責任なことは言うものではないと感じる。オール電化のいえが好まれるのも火の取り扱いが安心という理由がある。


 江戸時代から火事は恐ろしいものだったのだろう、振袖火事とよばれた明暦の大火、八百屋お七で有名な天和の大火など今も語り継がれている。それほど怖い火事だからいけばなとも関わっている。昔の家は紙と木でできているので火は極力避けた。ひという字が付くものも嫌われた。「ひおうぎ」「ひば」「ひがんばな」は新築に飾るのを遠慮した。火事の葉も同じ理由で避けられた。いま女性に愛されている赤い花も火につながるので飾らない。それだけ火が恐れられていた証拠だ。では引っ越しに飾ったものというと「万年青(おもと)」が好まれた。万年青は別格の扱いを受けていたようで赤い実でも喜んでかざられたらしい。またお祝だけでなく葬祭にも用いられた。


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