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第四十三回: 息子が私をこえる時 

 こどもが男児ならば、いつかは私を超えてほしいと思う。私は背が低いので、まず二人の息子には背をぬいてほしい。風貌はまあ私の遺伝子が半分入っているのだからあきらめてもらう。冗談はともかく男としてどんな人生をあゆむのか、自分以上の人になれるのか、なってもらわなきゃ困るし気になってしかたない。 最近そのきざしというか、私とはちがう人なのだという当たり前のことを息子たちに感じることがふえた。


 長男が小学生の時にかいた絵に「夜明けのクジラ」というのがある。全体に漆黒の少し手前、あたたかみを感じさせる闇にクジラのインディゴの背が波間にうっすらうかんでいる。もともと絵が好きだし、長男の動物の絵は透明感のある明るい色と優しい目が特徴だった。しかし「夜明けのクジラ」は今までの息子の絵ろは明らかに異質だった。小五でこの絵がかけるなら私と弟の母校、日大芸術のようなインチキアートの大学でなく、まともな美大を受けさせようかと真剣に悩んだ。闇とか影とかが描けるのはとても大事だし、闇や影にも温かみや愛情が注げるのはすばらしいと思った。透きとおった影、温かみのある闇が描ける人はそういない。この方面から絵画なりいけばななりを追求していけば面白い作家になると思う。


 また文学や歴史もすきだが、長男のなかではそれらが一体となってひとつの世界を作っているようにおもう。幼稚園の時先生から「ノブちゃんにはノブちゃんワールドがあって、そっちの世界にいっちゃうとなかなか帰ってきてくれない」といわれた。今でも独特の世界の中から他人や世間を見ているように感じる。人との付き合いは好きだが自分の世界はこわさない。その部分を大事にしながら友人とつきあっているようだ。


次男は努力家である。これほど努力する男を私はあまり見たことがない。長男は私とおなじ表六玉だからねっころがって試験勉強していても叱る気はしない。けれど次男はきめられたトレーニングはきっちり仕上げていく。今年の柔道の試合は体重が44.9キロだったので軽量級でエントリーした。さいたま市の大会で優勝した。市で優勝すれば県大会に行くことになる。ふと不安になり体重計に乗ると46.7キロにふえていた。県大会までは45キロ未満におさえなくてはならない。筋力をたもちながらの体重調整も県大会優勝のために文句も言わずに耐えた。水分をとってモヤシを食べそれから鶏のささ身を摂るとカロリーを抑えられる。夕飯を5時前にすませれば胃の内容物は消化してしまう。間食はトコロテンかコンニャクゼリーにする。練習メニューは減らせずに朝は、ななめ懸垂200回なわとび300回、夜は足の上げ下ろし500回にフィットネス30分私と投げ込み20回にうちこみ50回。それに道場の練習がくわわる。最後に体調をくずしながらベスト8は立派だったと思っている。


この二人に共通しているのは「私に見えないものが見えている」ことだ。長男の絵画の先にあるもの。次男の柔道の先にあるもの。私はそれらを解説したり指導したりはできる。が、私には彼らの真髄が見えていない気がする。私がどんなに頭で考えたとしても二人の息子は楽しみながら、はるか上のレベルに到達しているようだ。


本人の前ではくやしいから絶対言わないが、長男の絵を見たり次男の背負投げを見ていると「すごい」とため息が出るときがある。私ではどうやっても到達できないことを、いとも簡単にされる時「越されたんだ」とおもう。父親はこういう時息子の前でどんな顔をするのだろう。 結局ひとつも父のことを超えられなかった私にはよくわからない。


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