第四十四回: それでも好きだ
私は記者でもキャスターでもジャーナリストでもない。科学者でも解説者でも教授でもない。政治家や公務員や原発関係の人々でもない。それゆえ今回の地震に際してこのコラムで触れるかどうか散々迷った。何をどう話しても真実味が込められずに、うわっついた文字の羅列になってしまう。いまお困りの方々に、その場限りのお見舞いで終わってしまう。一体自分には何が伝えられるのか。どういう立ち位置で今後生きていくのか。考えてみた。
「それでも日本が好きだ」というのが結論だ。私のステージはここしかない。ここで生まれ、生活し、そしてここで死んでいくのだ。まずは受け入れよう。非難するのはそれからでいい。
この文章を打っている間にも余震がきた。余震も津波も放射能もこわいけれど、それでも私は日本がすきだ。世界中のどの国よりも日本が好きだ。歴代の桂古流家元が素晴らしい花型を残したこの日本。すべてのスタートはこの国を愛することだ。
まずは日本を愛そう。
そして被災地を愛そう。
うわべで気の毒がったり過剰に食物産地をおそれたりするのはやめて、同じ日本に生きるものとして「あなたが好きだ」という気持ちになろう。被災者なんて呼ばれる人はいない。同じ日本で生活している人なんだ。同じなんだ。
何が起ころうと、どんなにつらかろうと私はこの国で生活することを選ぶ。震災は怖い。それでも日本が好きだ。
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