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第四十七回: 何を意識するか

 生徒さんはいけばなを習いにきている。ただそれだけでなく私たちを見に来ている部分もある。母と京子が洋服を買う理由に 「何度も同じ服を着て教室に出られない」ということをあげる。一見なるほどと思う。よく考えるとただの言い訳だが、まあまあいいだろう。女性同士の視線にはそういう意味も含まれるのかもしれない。


 先生はある程度の緊張感が必要だと思う。いつも外に向かって意識を注いでいた先生が、ある時を境に内にこもってしまう。すると急にくすんだようになる。 化粧もおしゃれもしなくなる。そういう先生の変化に生徒さんは敏感である。どことなくゆるみ始めた先生に対して生徒さんは動揺する。生徒さんにその手の不安を抱かせてしまうのは気の毒である。


 私も色々な先生と出会ってきたが、皆さん緊張感のあるすばらしい先生ばかりだった。 外にでて人と会うのは知識を得たりする以上のメリットがもたらされる。「他人の目のヤスリにかけられる」という言葉があるが、先生は人前に立って輝く存在であってほしいと思う。体が動かないときは手紙や電話、インターネットなどで外部とつながるだけでいい。気の張り方は違うだろう。


 私たちは伝統芸能に従事しているのだが、だからといって古いものばかりいけているわけにはいかない。かたくなに固執するのは新しい時代に置いて行かれることになる。いけばなは500年前に誕生している。そのまま新しいものを取り入れずにいたら、進化もしないですぐに滅んだはずだ。いけばなという文化そのものは古いのだけれど、常に新しい感覚を取り入れている。最新の時代を織り込みながら製作している。


 伝統芸能の伝達方法も時代とともに変わる。「茶の湯とは耳に伝えて目に伝え、心に伝えて一筆もなし」という。千宗旦の言葉とされる。初期のいけばなも似たようなものだ。当時は読み書きなどわずかな者しかできなかった。そもそも印刷物などなかった。師匠の手と見本がすべてだった。 江戸期に入り浮世絵が発達すると印刷物になって、いけばなは広まっていく。元禄を境にいけばなが江戸で人気を得ていったのは浮世絵と無縁であるまい。


 明治期になると書籍が普及し始める。教育というものが近代国家にとって重要な位置をしめた。そして学校では教科書を用いはじめ、「読書」という習慣が生まれたからだ。現代でも書籍は大切ないけばな伝達のメディアだ。私の両親は「主婦の友社に育ててもらった」と口にする。私は加えて講談社や婦人画報社にもお世話になった。書籍というか面白いところでは「ゲゲゲの鬼太郎」にいけばな作家がでてくるシーンがある。男が木にかえられ、それを「すばらしいオブジェだ」といっているのだ。


 またラジオ番組でいけばな講座が放送されている。これはどういう風に行ったのか非常に興味深い。聴衆者もテレビより空想力が必要だ。伝える側、受け取る側の双方とも頭の体操になりそうである。 テレビはすごいメディアだ。出させていただいて本当に感謝している。人の目にとまる率が格段にあがる。一度出させていただくと思いがけない人から声をかけられる。


 ドラマにいけばなが使われることがある。これも強い影響をあたえる。だから良いイメージのドラマをつくって頂きたい。跡目相続のサスペンスものより、韓流スターが出てくる恋愛ドラマのほうがイメージアップにつながる。陶芸は朝鮮大陸からの伝来物だし、いけそうである。ストーリーはこうだ。有名な家元令嬢が、美術展で韓国の器に心ひかれる。イチョンの工房をたずね、陶芸家と家元令嬢は運命的な出会いをする。お互いに一目で恋におちる。はげしく惹かれ合うふたりだが、両家の親が格式を重んじて会うことすらゆるさない。そして…てな展開はどうだろう。プロデューサーさん、著作権料はいらないからドラマにして。いけばな指導は桂古流をよろしく。


インターネットは今ご覧の皆様に説明は不要だろう。私は16年前からホームページを始めたが、10年前から電話帳よりホームページの方が問い合わせの件数を超えるようになった。 さて、これだけ多種にわたる伝達方法で一番教えやすいのはどれかといえば、やはり現物を見せる方法だ。百聞は一見に如かずというが、実物の力は偉大である。500年前と同じ手段で伝えている文化というのもそうはないだろう。しかし3Dとかar(拡張現実)がもう少し簡単に作れるようになったら、いけばなの通信教育は一気に広まるかもしれない。 私たちは常に最新の情報に意識を注ぎながら、何が一番有効か常に探してゆかねばならない。伝統芸能こそ外に向ける緊張感を忘れてはならないのだ。その緊張感の持続がいけばなを、あかぬけた存在にしてくれる。

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