第六十四回 いけばなの名前
今回はいけばなの名前についてお話します。
お花を習っている友達に「私お花の名前持っているんだ」と言われたことある人、いるんじゃないですか。いけばなでは一定の期間のお稽古をし、資格を持つと名前がつきます。
桂古流では花定式(カジョウシキ)といいます。お稽古回数が80回以上で、期間は1年半以上です。花定式はいけばなの世界で通用する名前です。自分で自分の名前をつけるなんて、そうめったにないことなのでみなさん真剣に考えられます。桂古流では親先生の1字を頂いて自分の名前と組み合わせるのが一般的です。
三代目家元の池先生以降、代々家元には「華」の字が入っているので、家元社中だと「華」の1字が入っていることが多いです。春子さんならば「華春(カシュン)」となります。また五代家元の「華甫」の甫の字をいただいている社中もいます。夏子さんならば「夏甫(カホ)」となります。また七代家元「華慶」の慶の字をいただいている方もいます。秋子さんならば「慶秋(ケイシュウ)」となります。また六代目は「花」の字を好んだので「花」をいただいた方もいます。冬子さんならば「冬花(トウカ)」となります。甫とか慶とか花を見るといつ花定式になったかどうか分かります。このようないけばなの名前を雅號(ガゴウ)といいます。
これはつけ方の一例です。むかしから思い入れのある字を使いたいという方もいますし、結婚して名前が変わるとき、お花の名前に旧姓の1字を残したいという方もいます。旧姓が田中さんならば中をとって「華中(カチュウ)」となります。
師範をとるときは庵號(アンゴウ)がつきます。だいたい2年半くらいの期間お稽古に励み、100回お稽古回数を超えると奥伝(オクデン)という免状が頂けます。この奥伝を取得すると、いよいよ師範を受験できます。そしてみごと師範になると家元より教授職の許しをもらい、庵號のついた免状をいただくのです。
庵號の由来は、昔いけばなの師範(先生)は小さい庵(イオリ)を構えてお稽古しました。その際建物の名前をつけました。それが庵號です。6世以降の家元は汲雪庵といいます。これも親先生から1字を頂く場合が多いです。家元社中なら「汲」か「雪」がつきます。鈴木さんなら「鈴雪庵(リンセツアン)」となるでしょう。
いろいろ考えながらいつしか自分に馴染んでいく名前。お稽古にはげみながら「自分の雅号はどうしようか」と考えてみるのも楽しいものです。
|