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第七十回 守りつづけるもの


  東京駅が開業当時の姿に復元された。久々にいいニュースだった。そんな大喜びというのではないけれど、少しだけ心の灯を明るくしてくれた。東京駅は辰野金吾の設計とされる。歴史ををひもとけば辰野金吾と並び称されるのは片山東熊だ。二人とも工部大学校(東京大学工学部)を卒業し、日本建築の礎となった。


 ここのところ注目を集めたのは辰野金吾だ。東京駅や映画プリンセストヨトミでも話題となった。民間に建物がのこっているから親しみやすい。
  余談だが、片山東熊は辰野にくらべ公共の建物にかかわった。特に力を入れたのが東宮御所(赤坂迎賓館)だった。竣工したあかつき、明治帝にご報告へうかがった。片山が心血そそいだ東宮御所に帝は「ぜいたく過ぎる」と一言おっしゃった。片山はショックのあまり病気がちになったと伝えられる。明治期、市民の皇室への崇敬の念がうかがえて興味深い。このエピソードで片山にも親しみがわく。


  さて、東京駅。今回の復元では戦災で焼失した部分もできるかぎり資料を集め当時の姿に近づけたと言う。天井には十二支が描かれた。方角も北にねずみ、東にうさぎ、南にうま、西にとりが配置されている。
 JR西日本は京都駅、大阪駅とメガステーション化がすすんだ。その一方で東京駅が保存に成功したことは今後の駅開発におおきな影響をあたえる。


 いけばな芸術協会の西部展懇親会で文楽の祝舞、二人三番叟をみた。文楽については三浦しおんの「仏果を得ず」の枠を出ない。素人には理解できない芸だと思っていた。それがどうであろう、その躍動感、滑稽さ…上方の喜劇に通じる笑いがある。真剣に見れば見るほど、本来の空気感で味わいたいとねがった。背広着てイスにかしこまって座りながら見るのでなく、大衆芸としてリラックスしながら文楽の真髄に触れたい。

 そう思って間もなく、文楽の補助金打ち切りの報道がながれた。財政的に厳しい大阪市がとった決断だった。もともと補助金に縁のない桂古流であり新藤花道学院である。文楽協会が補助金を凍結されると、どれほど困るか想像もつかない。けれど素人が見てあれだけおもしろい文楽という世界は残すべきだし、広めるべきだ。単純にそう思った。補助金凍結も何とかならないものかと気をもんで推移を見守った。しばらくして、条件付きではあるが補助金凍結が解除された。大阪市は、これはこれで苦渋の決断だったろう。


  東京駅ほど話題にならなかったけれど、伝統文化への行政の態度、芸への理解という点では忘れてはならない出来事だった。






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