桂古流いけばな/活け花/フラワーアレンジメント/フレグランスフラワー

ホームサイトマップ
 

第七十四回 今この一瞬を


  あの地震のとき、揺れがおさまっても私はオタオタしていた。

  そんな私と対称的だったのが家内だ。てきぱきと夕食の準備をはじめた。健康に気遣い普段は雑穀米だが、あの日は白米をたくさん炊き、どこにしまってあったのか冷蔵庫からヒレステーキをとりだした。      
 そして子供達に「これだけ大きな地震がきたら、今度いつまともな食事が食べられるか分からない。今夜は悔いの残らないように思う存分食べなさい」と言った。

 それを聞いた時、家を守る婦道の誇り、いざという時の女の度胸を感じた。家内を見て、私が家族を守る、そして桂古流の人々が、今まで通りお稽古を続けられる環境にしようと強く思った。私が震災で不安にならなかったのは、家内が食事の準備をする姿を見ていたからだ。

 震災後に強く感じたのは「今この一瞬を大事に生きなくてはならない」ということだった。今現在を大事に生きられない人は、明日も明後日も大事に生きていくことはできない。むやみに未来を心配している人、過去を後悔している人、たくさんいる。しかし私は、まだ分からない先のことや、もう過ぎ去った後のことに貴重な現在という時間を使いたくない。 

 
 いつごろからか寝るとき「もし明日目が覚めなくても後悔しないか」と考える癖がついた。
それは今日一日やるべきことは全部したか、ということにつながる。
現在を懸命に生きるには「幸せ、苦しさ」両方がある。私が自身に求めている段階まで達成したか、次に周りが私に求めている仕事をしたか考えながら寝る。
お気楽な性格なのでたいていは「あーやったやった。 心配も後悔もない」とすぐ寝てしまう。


 一瞬はみじかい。でも一瞬がつながり一時間になり一日になる。一年になり一生になる。一瞬を精一杯生きる。後先考えずとにかくやる。私の行動の中軸はここだと思う。
 私はしょせん私だ。ちっぽけな存在だ。私を私以上に大きく見せようとしても無理だし、きゅうくつだ。私なりの人生を私なりの速度で懸命に生きていくほかはない。

 今日も一日がはじまる。一瞬がつながった時間の中で人々が生活している。それだけで私は尊い気持ちになってくる。与えられた時間を生きよう、今この一瞬を。

 


バックナンバー>>
桂古流
最新情報
お稽古情報
作品集
活け花コラム
お問い合わせ
 
桂古流最新情報お稽古案内作品集活け花コラムお問い合わせ
桂古流家元本部・(財)新藤花道学院 〒330-9688 さいたま市浦和区高砂1-2-1 エイペックスタワー南館