第八十一回 商店街を歩く
沖縄に行った。プライベートだったので観光が主体だった。最終日に私と子供はプラプラ歩くことになった。
どこに行こうか考え、国際通りから市場中央通りにはいった。
様々な商店街があり異国情緒あふれた品物が売られている。Tシャツ屋、香水屋、お菓子屋、クジラの置物屋、茶碗屋、花屋、訳のわからない屋、変なの屋、酒屋、雑貨屋。
一軒一軒、首つっこんで眺めていくと本当におもしろい。
混んでいる所、すいている処、古いところ、新しいところ、はやりの処、閉めた所…薄暗い所に強い光の電球が下がっていて、木箱を台にした陳列棚なんか見ると一気に記憶をさかのぼる。
主要な道から脇に入ると一転して市場色が強くなる。さすが沖縄だ。直売センターは昔のスーパーのようだが、もっと生々しい。
見たことない極彩色な魚がたくさん並び、透明な水槽にブクブクとエアをいれている。その中をゆっくり貝が動いている。となりの肉屋にはブタの顔が売っている。笑っているように見える。怖いような面白いような「本物」のドキドキがある。
さらに脇道にそれる。本屋と呼べないような本屋をみつける。3畳くらいの店だ。中に入り口とレジで1畳、小説など文庫本の棚が1畳、専門書が1畳となっている。なかなかよく出来ている。結構面白い本が売っている。小沢昭一と永六輔、ソルジェニーツィンを購入する。どんどん歩くと突然道がなくなってしまう。つまらないので引き返す。
子供たちも楽しいみたいだ。疲れないのか、笑いながら元気についてくる。礼服屋をのぞき見て喜んでいる。何がおかしいのか「黒い服ばっかりだ」と大声で言いながら盛り上がっている。むしろ私がへばってきた。
一時間歩いてさすがに足が萎えてきたので喫茶店をさがす。普通の喫茶店だ。扉をあけると香ばしい焙煎のかおりが広がる。久々に喫茶店を見つける。店内にはニューミュージックが流れる。ブレッド&バターのあの頃のままが流れている。温かい飲み物を飲みながら急に高校生にタイムスリップしたように感じる。
しばらくゆったりしながらお茶を楽しむ。体温も上がってきたので再び歩き出す。
中華料理屋の先が急に階段になっている。そのまま公園か城址のように緑の多い登り坂につながっている。なんと公園の樹にはコウモリがとまっている。しかも大きなものがひっくり返しにぶら下がってこちらを見ている。
こわごわ眺めながら元の場所にもどる。
横浜の中華街も、大阪なんばも、飯田橋も、京都の新京極も、富山も、金沢も、銀座も…
商店街をあるく。そこに異郷へ来た醍醐味がある。
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