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第九十一回 完成体の功罪 〜旦那とやんちゃの相違〜


 よく「社会の閉塞感」と言われる。
 私は社会の閉塞感を放っておくと暴動とか革命につながるように思う。
 社会の閉塞感とは世代の壁ともいえる。旦那の世代は何にも感じていないのだけれど、やんちゃの世代はとても負担に感じる。旦那の世代が普通に話しているだけなのに、やんちゃの世代は自慢されているように聞こえる。
 日本の高度経済成長期を体験した旦那の世代と、バブル以降に社会に出たやんちゃ世代、そこには埋められない溝がある。

 戦後日本の成長の中で自身も成長した旦那の世代は、人生が完成体となったのと同時に日本もある種の完成体を迎えた稀有の存在である。多分歴史上でこんな偶然を生きてきた人たちは、そうはいない。
 「特殊な時代を生き抜いてきた」のである。
 これはやんちゃの世代も知らなくてはならない。やんちゃの世代が卑下する必要もないし、旦那の世代が威張る話でもない。様々な偶然が重なり、日本は戦後未曽有の好景気が続いた。その好景気の源はどこから来ていたのか、あまり考えずにいた。
 考えずに好景気で目の前のたくさんの仕事をこなし、生活が豊かになった。
 一生懸命働いた。

 私たちは悲しい習性をもつ民族だ。働くのが大好きなのである。忙しいことに人生の充実感を得てしまう。一方でリタイアすることに罪悪感を覚えてしまう。後進に道を譲るなど、旦那にできはしない。仕事も全部こなさなくてはいられない。これを是として生きてきてしまった。
 努力という形で参加し完成体として出来上がった社会を、旦那の世代は珠玉として大事にする。
 でもやんちゃの世代は入り込む隙間のない住みづらい社会としてとらえている。あまりに綺麗に整えられすぎていて、息が詰まりそうになる。

 誤解を恐れずに言えば、完成体になっている社会で、どうでもいいことというのは意外に多いのではないかと思う。言いだした人が大きな声で言っているから重要事項のように感じているが、本当に大事だと思っている人はあまりいないのではないか。政治家は投票数を、新聞は発行部数を、テレビは視聴率を獲得すれば民意を得たこととなる。
 それらに生真面目に反応するのは旦那の世代だ。

 例えばマスメディアだ。旦那の世代はマスメディアを作ったという自負がある。表も裏も知っている。やんちゃの世代は完成体のマスメディアしか知らない。実はいまでこそ規律規制とお題目を守っているが、元々は約束も何もあったものではないのがマスメディアだ。テレビもラジオもたくさん失敗をした。その失敗が楽しかった。欽ちゃんの野球拳がPTAのやり玉に挙がったなど、みんな忘れているだろう。マスメディアを規制し成長させたと旦那は自慢かもしれない。
 やんちゃにすれば建前ばかりで薄っぺらくなったメディアなど不満かもしれない。

 テレビ・ラジオ・新聞はなぜつまらないか、規制規制でがんじがらめになっているからだ。
それに比べ、ソーシャルネットワーキングやポータルサイトはなんで面白いか、やりたい放題の無法地帯と化しているからだ。結局旦那はコントロールのきくマスメディアを大事にする。社会の是とする。やんちゃの不満は増すばかりだ。

 しかし旦那はなかなか隠居にならず、相変わらず旦那のまま君臨している。普通は押し切られる旦那がまだまだ大勢いるので、やんちゃが時代をひっくり返せずにいる。

 やんちゃはくすぶっている。旦那は気づかずにいる。

そういうきな臭さを、私は嗅いでいる。


 

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